注文住宅

花游雲月亭(大谷邸)

実施エリア:

徳島県徳島市

内容:

【立柱方式、外断熱による工法】
立柱方式とは昔からの工法で寺社建築など礎石や基礎に直接柱を載せる工法で高温多湿の日本の風土に適した工法です。建築基準法により柱は基礎に固定することが決められています。戦後の復興で急速に住宅を建設することが急務となり、高度な技術を必要としない土台方式が木造住宅の工法として席巻するようになりました。
そもそものきっかけは、吉田氏が木と紙と土の昔ながらの家を建てたいと相談にやってきたことから始まりました。「やっぱり木の家」という本を手に、こんな家を建てたいんだけど、天羽さんならやってくれるんじゃないかと思ったということでした。
私がまだ設計事務所に勤めていたころ、吉田氏が町の教育委員会に在籍しており、学校建築の担当でした。その時に、吉田氏より付属施設としてパーゴラを作ってくれませんかと依頼されました。常駐監理をしていたこともあり、ちょっと気合を入れてパーゴラを設計しました。その時の印象が、既製品のパーゴラを設置すると思っていたら、実際にパーゴラを設計し、なかなか面白い人だという印象が強かったようです。
本を読んで面白いと思いましたが、実際に設計したこともないので、知り合いの工務店の方や大工さんに相談したところ、「やめといたほうが天羽さんのためになるよ。」と及び腰でした。そこで、一度は諦めようとしたのですが、一生のうちに一度くらいしか家を建てることはできないし、相談にのってくれる大工さんも見つかりましたので、吉田さんの夢なんだからやってみようと決心しました。
そこで吉田さんに5分5分の責任でやってみようと思いますが、いかがですか?とお尋ねしたところ、それでいいということになり設計をし確認申請許可を取りました。そして合見積を業者さん、大工さんに依頼すると以前は腰を引いていた工務店さんも「できます!」と二つ返事でした。最初に相談した時のことを思うと、とても封雑な気持ちでした。そうして現代に立柱方式を蘇らせることになったのです。
吉田邸の建前をしている時に、クレーンのオペレーターの人が「この家はしっかりしとるなあ。」と感心するようにつぶやいているので、どうしてですか?と尋ねたら、「この段階で鳶があそこに上がれるというんは、よっぽどしっかりしとうからや。鳶は危ないと思うたら絶対あがらんよ。」という返事でした。実際に組みあがってみると仮設の筋交いも必要ないくらいしっかりしていました。この時に自分が考えた立柱方式に大きな自信ができました。その後の木造住宅、笠井邸も立柱方
式(洋風)と外貼断熱で設計し、間違いがないと確信しました。今回、大谷氏より住宅の御依頼があった時も、立柱方式で設計することを決めていましたが、施主の理解なくしては、できません。何回かお話をするうちに、立柱方式、外貼断熱工法で設計したいのですが、と申し出ますと、よく研究されていたのと、HPを見ていただいていたのかも知れませんが、快く了解していただけました。今回は、立柱方式に加えて、和風木造住宅における外貼断熱にチャレンジしました。というのも、設計仲間から和風木造住宅で外貼断熱は無理と言われてましたので、そんなことはないという証明をするためにも精進しました。立柱方式は3棟目になりましたが、益々、日本の木造住宅は土台方式でなく、温故知新、土台方式から立柱方式に還ってゆくべきだと確信いたしました。

ダイニング(撮影:幸田青滋)

ダイニングより和室6帖、8帖を見る。欄間は透明ガラス引き分け戸。各部屋は欄間によって風が通るように配慮している。

和室8帖-1(撮影:幸田青滋)

和室8帖。床脇に月窓。花游雲月亭の月。

和室8帖-2(撮影:幸田青滋)

和室8帖。書院。床には書家、岩本志豪(しこう)氏の揮毫による「花游雲月」の条幅。

和室8帖から玄関を眺める(撮影:幸田青滋)

和室8帖から見返しの広縁、玄関です。大黒柱は四寸の柱に見えるように納めています。部屋の中からは普通の柱のように品よく納めます。(秘すれば花)

階段(撮影:幸田青滋)

小玄関(勝手口)の階段と祠手すりは雲形木製手すりで 階段蹴込に捻子梅切り込み。雲と花。

幕板(撮影:幸田青滋)

書院。幕板(紅杉)に捻子梅(ねじうめ)切抜き、花。

パーゴラ(撮影:幸田青滋)

パーゴラ。塀は透かしを入れて閉塞感が少なくなるように配慮している。外部の人と目線が合わないようにしている。

広々玄関(撮影:幸田青滋)

玄関を入ると左側が和室8帖になります。七寸の大黒柱が見え、右側の和室6帖では五寸の小国柱(通し柱)がありますが、ここからは見えません。一般の柱は四寸の柱(桧)です。

玄関正面(撮影:幸田青滋)

玄関正面 広角で撮っていますので、屋根などが誇張されており実際の印象とはちょっと違っています。玄関柱の柱脚は自然石の沓石を使用しています。監督さんが山でわざわざ探してきてくれたものです。

玄関アプローチ(撮影:幸田青滋)

門を入って左側に向かうと玄関がみえます。右側に向かうと小玄関(勝手口)に入ります。

外観-門(撮影:幸田青滋)

門は施主の所有されている家の門を再利用しました。かなり傷んでいるようでしたが、なかなか良い感じなので、屋根を修復し銅板を葺き替え、木部は洗いにかけ塗装をしなおし移設することにしました。解体することを考えて工作されていませんので、大工さんが苦労されました。