注文住宅

大郷の曲り家

費用:

1700万円

実施エリア:

宮城県

実施時期:

2013年

延床面積:

75平米

築年数:

1年

内容:

田園に佇む初老の夫婦のための木造平屋建ての住まいです。敷地は盛り土の三角地で周囲は濠のように法面があるため、建設可能な平場は1/3程度でした。その限られたエリアに「移動する距離を増やすように」LDKと主寝室が納められた馬蹄形のワンルームを据え、ゲストルームの離れを設けました。外壁は吹付けで周囲の景観に馴染む色合いとし、室内は杉板の天井とミズメザクラの無垢フローリングが白い壁面によく映え、のびやかでぬくもりのある空間となっています。真っ白な壁や天井だけでつくられる空間は実際冷たい印象を与えてしまいますが、木質の床と天井や暖色の照明の色味が白にあたたかな色調をあたえてくれる効果をもたらすよう計画しています。また、馬蹄形の平面は施工性を加味し多面体で構成。各領域が直線の壁でゆるやかに区別できつつも、移動するごとに室内と外の風景の変化や死角によって気配だけが伝わる仕掛けが体験できます。薪ストーブが要望でしたが、床下にも暖気を循環させ、東北地方の伝統民家である南部曲り家が台所の窯の熱で離れの厩を温めるように、この住まいも離れまで循環させる仕組みが施されているエネルギーロスの少ない住まいです。

■建物概要
用途:専用住宅
家族構成:夫婦+猫
敷地面積:483.19㎡(146.16坪)
建築面積:75.2㎡(22.75坪)
延床面積:75.2㎡(22.75坪)
構造:木造軸組工法
基礎:ベタ基礎(基礎断熱)
階数:地上1階
標準設備:薪ストーブ|IH|ユニットバス(TOTO)|エコキュート
照明器具:Panasonic|施主支給品(船舶灯)
衛生機器:サンワカンパニー|e-kitchen
撮影:西川公朗|前見文徳

台湾のデザインサイト緑・建築家による紹介記事
http://www.searchouse.net/op/arch?bid=828

イタリアのデザインサイトdesignboomによる紹介記事
http://www.designboom.com/architecture/post-disaster-residence-by-fuminori-maemi/

『Replan東北 Vol.43』にて掲載
http://www.replan.ne.jp/content/bookcart/b2tou/t43/index.php

『Replan東北 Vol.48』にて掲載
http://www.replan.ne.jp/content/bookcart/b2tou/t48/index.php

大郷の曲り家|外観2

この住まいは正面がない。この外観は県道に面しており、背後には山並みを背負っている。馬蹄形のLDKの屋根は片流れで手前に下がり、唐傘のような形状で山並みに応答するような雰囲気を意図した。外壁色はクライアントの姪(小学生)に塗りサンプルを送り、感性赴くままに決めてもらった。全体としてはシンプルなハコとしてのゲストルームと馬蹄形のLDKが視線が通り抜ける玄関を介してつながっているような即物的な印象でもあるが見る角度で同じかたちがないのも日々の生活では楽しい変化である。

アプローチ

LDKの母屋(左)と客間、水回りのハナレ(右)をつなぐ広めの玄関。既成サッシで無理をせず、永く使いやすい引き戸を選択。フロストガラスで柔らかな拡散光を玄関に取り込んでいます。アプローチはパーキングから車寄せの機能を兼ねています。助手席から降り、長めのスロープでゆったり移動できます。外観は屋根の連なりが建物全体にリズムを与え、田園風景の中で軽快でさわやかなで落ち着きもある印象を与えています。

大郷の曲り家|リビングダイニング1

ネダレス工法でミズメザクラの無垢フローリングに蜜蝋ワックス。天井は放射状に伸びる梁を表し、その間に6分の杉板を板幅を1本の材木から効率良く採れる幅でランダムに張っている。照明は天井に設けず、のびやかな天井を際立たせる意匠。竣工から1年経たないが木の生きている変化が楽しめる。カーブを描くワンルームによって手前のリビングからキッチンが見えにくく、それでいて作業の気配が伝わるので、付かず離れずの安心感が得られる。

大郷の曲り家|外観1

北側の馬蹄形をよく伝える1枚。開口は手前リビング、奥が和室に相当。それぞれ東を向き、1日のスタートが朝日を受けて始まるように周到に計画されている。雪が多い地域なので建物周囲の歩行空間頻度が高い場所への落雪が無いように屋根勾配を考えるとともに、地域のやませや季節風に考慮した開口計画としている。そのため、夏は風通しがよく、冬はあたたかで快適な室内環境が実現できている。

大郷の曲り家|リビングダイニング2

キッチンからのリビングダイニングの眺め。リビングのソファーに座るひとまでは見通せないが気配が伝わる距離感が計画されている。その真中にダイニングがあり、この空間の中心的な居場所となっている。広大な南に面する田園を室内に取り込む開口部が特徴で、窓辺には無垢板のベンチが据えられ、風景と人をつなぐ装置として働きかけ、日時計のように1日の時間移ろいがが楽しめる場所となっている。

大郷の曲り家|ダイニング

ダイニングテーブルはクライアント作

大郷の曲り家|キッチン

キッチンカウンター、バックカウンター等は分離発注とし、大工工事、建具工事を組み合わせ材工費を抑えている。キッチン奥には和室の主寝室。素通しの欄間によってLDKから天井の連続感と開放感がある。就寝前に薪ストーブを消しても朝方まで和室までも温かさを保っている。キッチン、水廻り、主寝室をコンパクトにまとめることはトイレが近くなったり、のどが渇いたり身体の変化が増える高齢の住まいにとっては何かと助かる。

大郷の曲り家|薪ストーブ

薪ストーブは北欧SCANの今では廃盤となったCL-1Gの希少品。みにくいアヒルの子の愛称でも親しまれている。

大郷の曲り家|リビングダイニング3

室内夜景。壁面のスポットライトを中心とした全般照明。木質天井の質感やのびやかさを大事にするため天井には設備、配線は設けていない。

大郷の曲り家|外観5

敷地の先端(南東)からの眺め。どの方向からも外観が見える距離感、隣棟間隔は郊外ならでは。様々な表情を見せる。