家づくりに役立つメールマガジンが届いたり、アイデア集めや依頼先の検討に役立つ機能や情報が満載!
アカウントをお持ちの場合
(OFFのときは写真にマウスオーバーで表示)
設計、監理を担当
ご夫婦が二人で暮らすためのマンションのリノベーション。築年数は経っているが河原沿いの立地で6階のため、眺望の良い住戸。
先々の住み替えも視野に入れているため、限られたご予算でのリノベーションとなり、その限られたご予算をどこまで合理的に使うかが計画当初からの課題となりました。
ご夫婦はもともとこのエリアで民泊のような事をしたいと考えられていて、そのためにまずはこのエリアに生活の拠点を移して土地探しをするという事で計画がスタートしました。
そのため、先々の住み替えが前提となっていて、必然的にコストも可能な限り抑えたいというご要望となりました。
限られた予算を合理的に活用するために、私達はまず解体工事に目をつけました。
解体工事は既存の間仕切り壁や天井・床を撤去し新たな間取りや仕上げを設置するための整地のようなものですが、既存の壁を解体撤去する際にはその壁と他の壁や天井とがぶつかる隅部も道連れになって解体される事になります。
また、それを何事もなかったように補修し新たな空間の下地とするのですが、この「何事もなかったように」する事にもそれなりの手間とお金がかかってしまいます。
残らないものに予算を割くべきではないと考えたため、解体にあたって既存壁を少しだけ残す事とし、これにより隅部の解体で生じる道連れと補修を削減しました。
また、残された小壁に切り込みを入れる等、既存壁の残し方をコントロールする事で、少しだけ残された壁が積極的に暮らしに参加してくるように設計しました。
小さな棚のようにものが置かれたり、隙間に本や新聞を挟んだり、お風呂上がりにバスタオルを引っ掛けたりと、改修前の間取りから引き継がれた小壁が行為の新たな間取りと完全には一致しない形で行為のきっかけを与え、空間に豊かさを生んでいる不思議な住居になりました。
計画段階では既存壁を残す事に対してコストメリット以外そこまでピンと来ていらっしゃらなかったご様子でしたが、引き渡し後の生活をのぞかせて頂いたところ、私達の想定しきれなかったような使い方をしてくださっていました。
はじめに異なるタイプのプランと模型をいくつかご用意させていただき、お施主さまの中でうまく言語化できていない要望に少しずつ形を与えて行くように計画をすすめて行きました。
厳しい予算感だったため見積り調整には少し時間がかかってしまいましたが、プロジェクト期間が長くなった事やお施主様の年齢が近かった事もあり、友人のような打ち解けた雰囲気でプロジェクトを進めて行けました。
施工して頂いた大工さんがとても丁寧で良い仕事をしてくださっていたので、現場の確認にも安心して行けました。
LDKから和室を見る。和室との境にあった壁に開口し、2室をつないでいる。開口の立上り壁の高さは和室の床に座った時にマグカップや読みかけの本を奥のにちょうどよい高さに設定し既存壁に孔を開けた。
和室との間仕切りに開けた開口の切れ込みに雑誌が挟まれた図。既存壁を少し残し、そこに切り欠きを行っていく事で、写真のように雑誌た新聞を挟んだし、小物やマグカップを置いたり、置いたことを忘れちゃったり。 何も無ければ起こらない事が、各所で起こるような住まいを目指した。
天井は一部開口し躯体のコンクリートを現し天井高を確保している。既存天井の解体においても、壁際まで撤去すると道連れで解体範囲が増えてしまうため、徹底して隅部は避けて解体している。 同様の理由から野縁受け(天井の下地)も残っていて、フックで植栽を引っ掛ける等の行為を誘発している。
解体のコストを削減するために少しだけ残された小壁。この小壁に施された欠込みはちょっとした行為のきっかけとなり、住空間を少しだけ豊かなものにする。
ダイニングから板の間を見る。正面の壁は改修前キッチンが置かれていたスペース。流し台と冷蔵庫の間にあった壁を少しの残している。 残した小壁を切り欠いた凹みに絵が飾られている。飛騨市に見えるのは和室の押入れ。押入れの下段は使い勝手が悪いため撤去し、床面に広がりをもたせている。
和室の押入れは使い勝手の悪い下段を撤去し、床を和室と連続させた。 下段が撤去された事で支えを失った押入れを文庫本を積み上げた支柱が支える。
解体コストを削減するために残置された既存壁の隅部小壁が住まいに彩りを与える。