2017/04/27更新0like10841view

著者:水沼 均

屋根の骨組みの中で最も美しい「垂木(たるき)」をとことん味わう!頭上鑑賞生活のすすめ

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水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

住まいの屋根はたくさんの骨組みによって支えられています。屋根まわりは、木造建築でもっとも骨組みが入り組んだ部分なのです。しかしこれらの骨組みはふつう天井板に隠れてしまい、目にすることはほとんどありません。ちょっともったいない感じもしますよね。そこでここでは、屋根の骨組みの中でももっとも美しい「垂木」という部品を見せる手法についてお話ししましょう。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

垂木とはなにか?

垂木は屋根を支える骨組みの1つです。太い骨組みの上に約45センチの間隔で並んでいる細い骨組みで、屋根板を直接支えています。

垂木は通常は天井板に隠れて、目にすることはありません。しかしあえて天井板を貼らずに、垂木が並ぶ美しさを見せる演出をすることもよくあります。細くて本数の多い垂木は、格子のように繊細なデザインを頭上に作り出してくれます。

それではさっそく、垂木天井のすてきな例をご紹介しましょう。

頭上に繊細さをもたらす垂木

下の写真は和風の玄関ホールを屋根の骨組みむき出しで作った例ですが、天井の傾斜の方向についている細い骨組みが垂木です。垂木が格子状についていることで、繊細な和風の雰囲気がより生きています。もし垂木が見えなければ2本の太い骨組み(梁)だけが存在することになり、和風というよりは山小屋風の雰囲気に近づいてしまったことでしょう。

このように垂木は、頭上を繊細に美しく見せたいときにぴったりの存在です。さらに言えば、垂木の持っている繊細な美しさをぜひ味わってほしいために、設計者は天井板を取り払うのだとも言えます。

垂木の設け方を変えてさまざまな魅力を演出する

垂木は骨組みの中でも大変細い部品で、ふつうは取り付け間隔も小さく設けられています。が、せっかく屋根裏を露出して垂木を見せるのならば、もっと太くしたり取り付け間隔を変えたりして、変化ある楽しさを与えようという試みも数多くなされています。

下の写真は古民家のような味わいの新築住宅ですが、垂木天井で作られています。そしてこの垂木は一般に用いられるものよりも太く、取り付け間隔も45センチよりかなり広く見えます。結果、ここでは垂木は繊細さよりも力強さを強く感じさせます。垂木の設け方一つで、住まいのキャラクターはこんなに変化するんですね。
目時亮「松本岡田の家 -切妻六.五間堂-」
そして下の写真は、屋根裏に必要な骨組みの役割をすべて垂木に担わせた、とても大胆なデザインの例です。

他の骨組みがない分、垂木はだいぶ太くなっています。が、厚みは極限まで抑えています。そして取り付け間隔も狭めに徹しています。結果、和風にも通じる独特な繊細さが見事に表現されています。眺めていても大変美しく、まさに垂木が住まいの主役になっていますよね。

垂木と光と組み合わせると、美しさは倍増する

繊細な垂木の縦格子は、光に照らされることで一層の立体感と美しさを見せてくれます。頭上の高い位置なので直射光が当たるケースは少ないですが、反射光で柔らかく照らされて頭上の世界に浮き上がって見える垂木格子の美しさは、まさに絶品と言えます。

下の写真は壁一面の障子窓に垂木が照らされている様子です。フラットな天井が貼られた状態よりもうんとコントラストと立体感に富んだ、魅力的なスペースになっていることがわかります。
宮田恵実「I-house・RC+木造の大屋根の家」
また下の写真は、真下から垂木が照らされている大変凝った作りの階段室です。吹き抜けを活用して、屋根裏を下から照らすという大胆な演出をしています。これもまた、垂木と光が見事なマッチングをしたすばらしい例です。

内と外をつなげる垂木

屋内ばかりでなく屋外でも、軒先を垂木天井にすると、垂木は内と外を貫通して庭に向かってスッと延びて行きます。その結果、内と外の関係はますます緊密感を増してくれます。

下の写真では深い軒先を垂木天井にして、屋内と連続させています。また土間を屋内に入れ込むことで、屋内外の一体化をますます強調しています。

屋根の形を見せる垂木天井

垂木天井にすると、屋根の形状をほぼそのまま屋内から眺められるようになります。住まいがどのような形の屋根に覆われているのかを、いつも目で見ながら暮らすことができます。屋内にいながら、住まいの外観を感じ取ることができるわけです。

下の例は「方形屋根(ほうぎょうやね)」と呼ばれるピラミッド形の屋根です。この特徴ある形の屋根の魅力を最大限引き出すためにも、垂木の天井はぴったりのしつらえですね。
西和人「『木の下のマテリアル』柔らかさ、しなやかさをもつ住まい」
下の写真もまた方形屋根の住まいですが、上の例とは異なり、ピラミッド屋根の半分だけが頭上に見えています。こうすることで、今いる部屋が住まい全体の半分の広さなのだと容易にわかります。住まいの外観と間取りが感覚的に一致してくれるととても心地が良く、安心感を得られますが、垂木天井のおかげでこれが実現できるのです。

垂木天井は下階にだって作れます!

さて、垂木は屋根を支える部品なので、垂木天井はどうしても最上階にしか作れません。ところが、下階でも垂木天井に似た雰囲気を楽しめる方法があるのです!

上階の床は「根太(ねだ)」という細い骨組みに支えられていますが、この根太は太さも取り付け間隔も、垂木と同じなのです。したがって天井板を貼らずに上階の床下が露出するように作れば、下から根太の並びを眺めて楽しむことができます。

下の写真は大変わかりやすい例です。上階の床を支えるために太い梁(水平の骨組み)が組んであって、その上に45センチの間隔で根太が並んでいます。細くて繊細な根太があることで、大きな梁の太さが相殺されて、とてもバランスの良い頭上空間ができあがっていますね。
天井はふつうに作ると無地でシンプルな存在ですが、天井板を貼ってしまわずに垂木をむき出しにすることで、陰影に富んだ美しい造形を手に入れることができます。住まいづくりではとかく間取りや目線の高さに関心が集中しがちですが、ぜひ頭上の世界を彩るしつらえも検討なさってみてください。

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