2020/03/14更新0like799view原 ふりあ

リノベーションでまず考えるべきは「配分を変えること」

住宅のリノベーションには、新築と違ってコストや工期を抑えられるという利点があります。しかしその分、既存の建物本体(躯体)には原則として手を触れず、空間を変える必要があります。そこでまず考えるべきことはなんでしょうか。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

新しい建主に合わせて、骨格をいじる

戸建住宅でもマンションでも、リノベーションに共通するのは「建物の外形を変えない改修」です。それは別の言い方をすると、「全体の大きさは変えず、異なる空間にする」ということ。

「異なる空間にする」

……と聞いて思い浮かぶのは、「仕上げを新しくしてテイストを変える」ことかもしれません。しかしテイストはむしろ後から検討しても問題なく、まず考えるべきは「部屋の配分を変える」ことなのです。

例えば、お弁当を思い浮かべてみてください。だいたいこれぐらいの大きさで足りるな、と思って600gの容量の弁当箱を購入したとします。でもその中で、主食(米)・メイン(肉魚)・野菜のおかず・漬物に割り当てるスペースは人それぞれ好みがありますよね。この年齢の男性で会社員だからこの主食の量、と決まっているわけではありません。

既存の住宅は、仕切りのついた弁当箱のようなものです。建てられた時代や、特定の建主のライフスタイルを反映しています。それを今、新たに住む建主の生活に馴染むよう、まずは骨格をいじる必要があります。

今回は、こちらの戸建リノベーションを一つの事例として取り上げてお話しします。

(1)玄関スペースを拡張する

この事例では、大きく二つの方法で骨格を作り変えています。
一つ目は、玄関スペースを拡張すること(図の赤枠)。

敷地にあまり余裕がなかった、あるいは建てた当初は玄関が重視されていなかった、といった理由で、玄関スペースが小さい住宅は多くあります。しかし、毎日の出入りで確実に使う場所である玄関。ここを広く取ることで、住まいの「ゆとり」を自然に生み出すことができます。
この事例の場合は、かつての和室部分(6畳+押入)をまるまるつぶして、玄関の土間に変更。これだけの広さがあると、趣味の自転車や自動車用品、アウトドア用品などを“保管”するだけでなく、実際にメンテナンスを“行う”空間にできるため、実用性が高くなります。
広くて明るい玄関スペースは気持ちが良いもの。もともとの和室についていた掃き出し窓を活かして、明るさも充分に確保しています。

(2)特定の用途に合わせた空間を作る

骨格の作り変え、二つ目は特定の用途に合わせた空間を作ること(図の水色塗りつぶし)。
リビングに併設させた「アトリエ」は、以前は単なる「洋室」として、おそらくは個室のように使われていたのでしょう。しかし現在の家族構成(夫婦+子ども1人)にとって、寝室は2階の面積で充分足りているため、この洋室は用途を限定した部屋に作り変えています。
また、2階に「書斎」「(ウォークイン)クローゼット」「トイレ(手洗い)」を追加し、その分各寝室の面積を小さくしています。

リビングやアトリエ、書斎、土間のような“時間を過ごす場所”が多く作ってあれば、寝室は“寝るだけの部屋”になるため、面積はある程度小さくしても問題ありません。
ここでポイントとなるのは、一つ目の玄関土間を含め、各部屋の用途を限定的にしていること。

「用途を限定された部屋よりも、多用途に使える部屋のほうが、自由度が高くて使いやすいのでは?」

というイメージをもつ方がいるかもしれません。リビングのような場所はその通りですが、家全体で考えると、用途を限定した部屋もあった方が住みやすくなる場合が多いのです。

用途を限定した部屋には、使うものを出しっぱなしにしたり、用途に合わせた収納・家具を作ることができます。土間でいえばメンテナンスの工具類、アトリエでいえば製作途中の作品や道具類、書斎でいえばパソコンや事務用品などがその例です。

「そこに行けばすぐ作業ができ、立ち去るときにすべて片付ける必要がない」という状況は、一日の流れをスムーズにしてくれて、長い目で見ると快適度が大きく変わります。

まずは骨格を考えるところから

このように、骨格をどう変えるかをまず考えるところからリノベーションはスタートします。

もちろんそれに続いて、仕上げやテイストを考える楽しさもあります。

この事例では無垢の木をふんだんに使い、キッチンや浴室・洗面室は一つ一つの金物に至るまで建主がこだわっています。そうした喜びも、賃貸ではなくリノベーションだからこそ。
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この記事を書いた人

原 ふりあさん

住宅をメインに、建築の設計と執筆活動を行っています。
アトリエ系設計事務所に勤務した後、独立。一級建築士。

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