2018/01/15更新0like3498viewSUVACO編集部

「家は住む人のプロフィール」高級マンションリノベに特化した建築家・各務謙司の横顔

高級マンションに特化した、リフォーム・リノベーションのデザインを行う建築家・各務謙司さん。時間をかけてお客さまを知ろうとする姿勢、住む人らしさが反映されたデザインには定評があります。

今のスタイルの背後にはどんな経験や考えがあるのでしょうか。学生時代やニューヨークの設計事務所で学んだことや、印象的なプロジェクトまで、さまざまな話を伺いました。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

各務謙司さん|カガミ建築計画、カガミ・デザインリフォーム

【profile】
東京都港区南麻布に生まれ、白金台で育つ。麻布高等学校を卒業後、早稲田大学・大学院で建築を学んだのち、フルブライト交換留学生として渡米。ハーバード大学デザイン大学院修士課程を修了し、ニューヨークで設計事務所に勤務。帰国後、地元白金台でカガミ建築計画を設立。

職歴:
1994年〜95年   Cicoganani Kalla Architectsに勤務
1996年 カガミ建築計画を設立。

受賞経験:
2006年 住まいのリフォームコンクール優秀賞(高輪S邸茶室)
2011年 住まいのリフォームコンクール
    (財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞(高輪I邸)
     住まいのリフォームコンクール優秀賞(目黒S邸)
2012年 住まいのリフォームコンクール優秀賞(田園調布F邸)
2013年 住まいのリフォームコンクール優秀賞(神戸M邸)
2014年 住まいのリフォームコンクール優秀賞(世田谷N邸)
2017年 住まいのリフォームコンクール優秀賞(青山P邸)

著書:
驚異のリフォーム・リノベーション術
世界にひとつだけのプレミアム・リノベーション

「建築士になったら?」幼稚園の先生のひと言がきっかけ

幼稚園の頃、積み木が好きでよく夢中になって遊んでいました。その様子を見ていた先生から「建築士になったら?」と言われて、初めて“建築”という仕事を知りました。幼い頃から、漠然と“建築家”になりたいと思っていました。

伯父がイサム・ノグチやバックミンスター・フラーとも仕事をした建築家で、中学校の時にはルイス・カーンの本をくれたのを覚えています。

父親はサラリーマンでしたが、GAギャラリーなど、建築関係の展覧会によく連れて行ってくれました。麻布高校時代はあんまり勉強をしなかったけれど、早稲田大学に入ってからは建築を学べることが本当に楽しくって夢中になりました。授業はもちろんサボらなかったですし、泊りがけで先輩の課題を手伝ったり、遅くまで設計事務所でアルバイトをしたり、建築にどっぷり浸かった学生時代でした。

建築家としての方向性が定まった、ハーバード時代

中学校の時に、親の仕事の関係でカナダに2年住んでいました。その経験や伯父がニューヨークにいたこと、先輩がイェール大学に進学したことなどもあって、早稲田大学大学院修了後はハーバード大学大学院に進みました。

実は早稲田の頃は、課題に真面目に取り組みすぎて、奇抜さやアイデアの面白さで勝負する同級生と比べてよく指導教官からは「ゼネコンか!」と言われていました。笑
でも、そうやってコツコツ取り組んできた姿勢が、ハーバードの入学試験では評価されたのだと思います。
ハーバード時代、ある変わった課題がありました。子供と遊びながら即興的にものを作る、“人形、子供、大人”というスケールが異なる3つの存在を意識しながらものづくりをする課題でした。

僕は、知人の5歳の子供と隣に住む同い年の友だちの2人と毎週遊びながら、その場で色んなものを作っていきましたね。彫刻のようなものを作ったり、箱に穴を開けて被ってみたり、最終的には2人の背丈に合わせた大きな箱を隠れ家に見立てたものができました。2人は自分たちがすっぽり収まる隠れ家を“ Kenji's Creation”と名付けてくれたんです。

“Kenji's Creation”は教授らから良い評価をもらえた上、僕にとっても転換点になりました。それまでデザイン主導型のいわゆる“スター建築家”を目指していましたが、お客さまと話し合いながら要望を掘り下げていきたい、自分の主張を貫くことよりもお客さまの顔が見える仕事がしたいと思うようになりました。今思えば、建築家としての方向性がそこで定まったんだと思います。

仕事のスタイルを学んだ、ニューヨーク

ハーバードを修了した後は、ニューヨークにある設計事務所で2年間働きました。ボスはイタリア系アメリカ人でとても厳しくって、同僚はどんどん辞めていきましたね。笑

僕は真面目さは評価してもらえましたが、それだけではダメなことが分かってきました。僕がいた事務所はイタリア系の富裕層が主な顧客で、彼らのマンハッタンにある自宅のリノベーションと郊外にある別荘の設計をしていました。ニューヨークの富裕層とひと言にいってもいろいろなタイプがいます。イタリア系なら、イタリア系の好みやライフスタイルが理解できる設計者をお客さまは選ぶのです。
ただ「カッコいい」「ステキ」ではなく、お客さまは自分たちのルーツやライフスタイルが反映されているようなデザインを求めていました。事務所のボスは一緒に食事をしたり、お互いの家に招いたり、友人のように付き合う過程の中でお客さまの好みやルーツを理解していました。

僕もお客さまとは家族を交えて食事をしますし、前に設計した家にお連れしたり、ショールームを一緒に訪ねたりするんです。“お客さま”と“建築家”の間にある、心のバリアの取り除き方をニューヨークのボスから教えてもらいましたね。

分野を絞ることで心が自由になった

帰国後、自分の設計事務所を立ち上げました。今と違って、その頃は戸建て住宅や幼稚園、クリニックなども設計していました。設立から12年目の頃からでしょうか、事務所の経営に危機感を覚えて、スタッフとも定期的に話し合いをしながら今後について考えていました。

たまたまお客さまから自宅マンションのリフォームと新築別荘の両方を同じタイミングで依頼されたことがあり、はっと気付いたんです。マンションのリフォームが自分のやりたいことなのではないかと。
僕の事務所は白金台にありますし、お客さまの自宅も港区かその近辺にあるので移動に時間はかかりません。リフォームは確認申請などの手続きが必要ない場合も多く、その分余った時間でゆっくりお客さまと向き合うことができます。ハーバード時代にやりたいと思ったことを実現できる形を見つけました。高級マンションのリフォームに分野を絞ることで、心が自由になったと感じています。

高級マンション自体はたくさんありますが、その人らしさを反映した内装を設計できる人はまだなかなかいないと思います。リフォームの事例を集めたホームページを立ち上げたり、設計のノウハウをブログで解説したり、そういった努力が実って今ではホームページ経由で仕事の問い合わせをもらうことも増えました。

センスはお客さまのもの

南麻布K邸

南麻布K邸

僕は決め打ちでデザインの提案はしません。一緒に食事をしながら、家具のショールームを回りながら、会話の中からお客さまの本音を引き出していきます。

たとえば、僕の中でも特に印象に残っている南麻布K邸。お客さまは海外暮らしが長く、会話の中で今まで納得行くようなキッチンを使ったことがないことに気付かれたので、思いきって「理想のキッチンを考えてみませんか」と提案しました。

その結果、レンジとシンクがそれぞれ2カ所、オーブンが3台、冷蔵庫が4台もあるキッチンができました。費用も予算の倍以上になりました。でも、星付きレストランで修行をしたこともあるお客さまからは、ようやく自分の腕を存分に振る舞えるキッチンが手に入ったと喜んで頂きました。
南麻布K邸

南麻布K邸

意外に思われるかもしれませんが、自分ではインテリアは得意ではないと思っています。よく「センスが良いね」と言っていただけますが、それはお客さまのセンスが良いのだと思います。住まいづくりとは、その人がどんな人か、プロフィールをつくることでもあります。そのためには時間をかけて、お客さまが本当に求めているものを共に見つけ出すプロセスが欠かせませんし、それこそが上質なリノベーションにつながると信じています。

よくある1日の流れを教えてください

6時半頃に起きて、朝食作り。
8時頃、娘が学校に行くので、散歩がてら一緒に家を出て、食材などを購入して自宅に戻る。

9時から9時半頃に事務所に着く。
午前中はメールチェックと、事務所のランチ作り。
ランチ時に各スタッフからプロジェクトの進捗を確認。

午後は現場や打ち合わせ。
夜19時半〜20時には帰宅し、遅くとも23時には就寝。

各務さんに20の質問

1. 建築家/デザイナー以外で選べるとしたら、どんな職業に興味がありますか。
幼少から建築家以外の職業を考えたことがなかったのですが、あえて言えば学校の先生でしょうか。

2. 影響を受けた建築家やデザイナーをお一人選ぶとしたら誰ですか。
特にいません。

3. 好きな住宅建築を一つ教えてください。
特にはありませんが、あえて挙げるとすればルドルフ・シンドラーの自邸でしょうか。

4. 今までで一番大変だったのはどんなプロジェクトですか。
初めて1億円を超える金額を掛けてリフォームした、マンションリフォームプロジェクトです。
海外在住のお客さまとメールのやり取りで、計画を進めていましたが、出来上がった後にいろいろな理由でお客さまの意にそぐわなかった部分のやり直し工事が発生してしまい、一年以上の時間を掛けて、工務店と一緒にやり直しを続けることになってしまいました。
当初からデザインする時間が不足していたことに加えて、メールと添付写真だけのやり取りでは、こちらの意図がお客さまに十分に伝わらなかったことは、大いなる反省点でした。

5. 仕事をする上で誰にも負けないと思う点はありますか。
自分では特に秀でた点はないのではと思っていますが、国内で高級マンションをリフォーム&リノベーションした実例数では、もしかしたら他の方には負けないかもしれないと思っています。

6. どんなものからインスピレーションを受けますか。
自分が実体験した空間からインスピレーションを受けています。

7. 今後仕事で挑戦してみたいことはありますか。
思いっきりクラシカルなお宅や、和風のインテリアにも挑戦してみたいです。

8. 依頼を引き受けるかどうか、決めるポイントはどこですか。
お客さまとの相性と、どれだけお客さまが僕らを必要としているかの度合いでしょうか。
また、急ぎのスケジュールでのお仕事は引き受けられないポイントの一つです。

9. 施主との初めての面談では、どんなことを聞きますか。
特に決めたスタイルはなく、お客さまのお顔や様子を見ながら、雑談から始めています。

10. 得意なジャンルや好んで使う素材はありますか。
マンションリフォーム&リノベーションに特化しています。
素材選びはお客さまとの打ち合わせの中から決まってくるので、特に好んで使っている素材はありません。

11. これまでにどんな家に住んでいましたか。
父親の転勤で、カナダの戸建て住宅に住んでいた以外は、全てマンション住まいです。

12. 今はどんな家に誰とお住まいですか。
今は築浅で買ったマンションで、全くリフォームをしていない状態(紺屋の白袴です)で、妻と子どもの三人暮らしです。

13. 日本で好きな街を3つ挙げてください。その理由もあわせて教えてください。
どの街も好きなので、3つを選ぶことは難しいです。

14. ご自宅で使用しているもので、買ってよかったものがありましたら、ひとこと理由を添えて教えてください。
お客さまが不要になったベッドのマットレスを頂いて使っていますが、最高級品のマットレスは寝心地が良いものだと実感しています。

15. これから家を建てる・リノベーションする方にオススメする本があれば教えてください。
拙著の世界にひとつだけのプレミアム・リノベーションはマンションリノベーションを検討する上でのカタログ的に使えて良いと思っています。
16. ペットは飼っていますか。
飼っていませんし、これまでも子供の時に昆虫や金魚程度しか飼ったことがありません。

17. 料理はしますか。もし、得意な料理があったら教えてください。
事務所でのスタッフと一緒のランチは週に2~3回作っています。得意な料理は中華と中近東料理やインド風カレーです。

【関連サイト】
きょうのランチ | カガミ建築計画
ある日の事務所のランチ。献立は油淋鶏と茹で鶏に豆腐とジャガイモのスープ。

ある日の事務所のランチ。献立は油淋鶏と茹で鶏に豆腐とジャガイモのスープ。

18. 寝る前や休日時にリラックスや気分転換でしていることはありますか。
小学校1年生の娘と遊ぶこと、そして暇を見つけて昼寝することが気分転換になっています。

19. 好きな音楽やアーティストはいますか。
今は特にいませんが、学生時代や米国滞在時に聞いていた80~90年代の音楽は聴くと懐かしくなります。

20. 好きな言葉・座右の銘を教えてください。
「どんな失敗も後になれば笑い話」です。
各務謙司のカバー画像
対応業務 リノベーション (マンション)
所在地 東京都港区
対応エリア 東京都 / 神奈川県 / 京都府 / 大阪府 / 兵庫県 / 福岡県 / 沖縄県
目安の金額

60平米 フルリノベ6,000〜6,180万円

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