2016/11/17更新0like4614view

著者:廣部剛司

専門家フィーチャー

住宅建築における「品格」と「金額」との関係【建築家・廣部剛司さん】

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建築家・廣部剛司さんによるエッセイ。「金額(予算)」という限られた条件の下で、いかに「空間の品格」を意識していけるのか。建築家の挑戦は続きます。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

「空間の品格」というと難しい言葉になってしまいますが、目指したい建築にはそんなものが備わっていて欲しいといつも考えています。
住宅の設計条件は一軒一軒違います。それは、住まうご家族がみな違う顔を持っていて、それぞれに大切に思うことがあり、生活の楽しみかたが違うから当たり前のことですね。

土地の条件がまったく同じということもないので、それだけでも同じ設計になることはありませんが、そんな<家族の肖像>が建築に映し込まれていくなかで、住まいはみな違う顔を持ち始めます。
実際に設計をご依頼いただくことになった建て主さんから、しばらくしてから「ハイグレードの案件しか受けてくれないと思っていました」と冗談めかして言われることが時折あります。そのコメントを半分うれしく、半分は難しいものだなぁ…という気持ちで受け止めています。

限られた予算と豊かな空間とのせめぎあいの先にあるもの

住宅というのは事業案件ではありませんから、基本的に投資した分を<回収>はしません(併用住宅の場合、ある程度は回収可能ですが)。

つまり、生活を彩る器を豊かにするための消費ということになります。だから、そのための予算というのは最初からそう「ゆとり」のあるものではないことの方が多いです。

弊社で今まで手掛けてきた住宅でも、工事見積額のまま調整なしで工事契約に進むケースの方が少ないです。豊かな空間に住まいたい。こだわりの機器類を入れたい…などなど、夢はどこまでも広がっていきます。それをある程度コントロールしながら設計を進めていくわけですが、最後の関門が着工時にやってくるわけです。

そして、細かな部分まで一緒に考え、バランスを計りながら(ここが設計者の大切な責務です)着地点をみつけます。
今までの仕事もかなりの割合で、そういうプロセスを経て完成しているわけですから、ホームページなどに掲載している空間はそんなチャレンジの結果でもあるわけです。

それが、先の感想につながるとすればうれしいことです。予算的に決して自由に材料や構造の選択ができたわけではない条件の中でも、豊かさが伝わったと思うからです。反面、出来上がった空間のイメージで最初から「無理だろう…」と、一緒に新しい住空間をつくることのできる「きっかけ」を逃しているとしたら…というのが、残りの<半分>です。
新しい住まいをつくることは楽しいことです。その楽しさを一緒に分かち合いましょう、という趣旨のことを初めてお目にかかる方には、よくお話しします。そして、いくつもの丘を一緒に越えながら完成へと歩んでいきます。

その道中、設計者である自分がいつも「空間の品格」を意識し続けていれば、それはつくる空間にいつの間にか浸透していくのではないかと思うのです。
対応業務 注文住宅、リノベーション (戸建、マンション、部分)
所在地 神奈川県川崎市高津区
主な対応エリア 埼玉県 / 千葉県 / 東京都 / 神奈川県
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