2019/08/19更新9like10893view

著者:水沼 均

建築家の探し方・選び方

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

センスあふれるすてきな家を設計して、いつもメディアを賑わせている個性的な建築家たち。けれども建築家に設計を依頼すると高いのではないか、あるいは、建築家の先生は気むずかしくて怖いのではないかなど、いろいろ心配してしまうこともありますよね。そこで、建築家に依頼するとはどんなことなのか、どうやって建築家を選べば良いかについて解説します。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

建築家とはどんな人たち?

建築家は建物の設計だけを請け負う、設計専門のプロフェッショナルです。設計とは、間取り作りはもちろん、材料や構造、設備を考えたり細かい部分の組立を考えたりして、すべてを図面に描きまとめる仕事です。

建築家は大きな建物だけでなく、1件の小さな住まいを設計するためにも、時間をかけて大量の設計図面を描きます。そして建て主の納得が行くまで何度もプレゼンテーションをしてくれます。

こんなにたくさんの作業をするのでは、設計料をもらっても元がとれないのではないかと心配になってしまうくらいに時間をかけるのですが、そこがまさに建築家の特色です。建築家とは、報酬のためというよりは、むしろ建築が好きで好きでたまらなくて設計をやっている人たちなんですね。何事にも好奇心や探究心が旺盛で、オープンマインドな気持ちで仕事をしている人がとても多い職種なのです。

一人前の建築家になるためには、なかなか厳しい修行が必要ですから、建築家の人たちには苦労人が多いとも言えます。苦労を重ねた人は、独特の柔らかい円熟した人間味を持つものです。「建築家の先生は気むずかしくて怖いのでは?」と感じがちですが、実際には決してそんなことはありません。人間味あふれる魅力を持った人格者が多いのも、建築家の世界の特徴と言えます。

下の図は、建築家が作ったプレゼンテーション用の図面の例です。
鷲巣 渉「1500万円で「人生を楽しむ家」のアイデア集」

建築家はどうやって探せばいい?

では次に、どのようにして建築家を探せばよいでしょうか。

幸い今日では大変数多くの住宅雑誌が出版されています。これらの雑誌には大勢の建築家が紹介されています。個々の建築家の作風がよくわかるように編集されており、地域や規模・予算別に建築家のリストが作られていたりもしますので、気軽に建築家探しをすることができます。

加えてインターネットの普及で、数多くのウエブサイトが建築家を紹介しています。SUVACOのサイトの中でも、全国の大勢の建築家の作品と経歴を見ることができます。

また、ほとんどの建築家はホームページを持っていて、自分の手がけた住まいを紹介しています。気になる建築家がいたら、どんどん連絡して直接会ってみましょう。

下の写真はSUVACOで、注文住宅の設計を請け負う東京の建築家を検索した画面です。東京だけでも250人以上もの建築家が紹介されていることがわかります。

何人くらいに会うのがいい?

せっかく新居という高い買い物をするのですから、1人でも多くの建築家に会ってみることをお薦めします。そうですね、少なくとも4、5人くらいの建築家には会っておきたいものです。

ほとんどの建築家は、特に費用を取ることなしに気軽に会ってくれます。そして自らの建築に対する信念や価値観を語ってくれることでしょう。さらに、新居の計画についても第三者から見た良いアドバイスをしてくれます。

また建築家に対して支払う費用は、個々の建築家にもよりますが、おおむね設計の作業を始めた段階から発生することが多いと言えます。したがって、細かい費用についても事前にまず相談してみることをおすすめします。

会う前に準備は必要?

建築家に会うことになったら、新居への自分たちの要望や問題点をできるだけたくさん書き出してチェックリストを作って、持って行くと良いでしょう。そして、もし住まいの雰囲気やデザインで気に入った写真やグラビアがあったら、ぜひ持って行って見せると良いでしょう。

これらの物は未整理な状態で持って行くのでかまいません。整理しようとすると大変な手間がかかります。でも建築家は整理がとても上手です。家を1件設計する作業というのは、膨大な矛盾要素を整理して最善の方法で住まいを提案することです。あなたのチェックリストも、きっと建築家が上手に整理をして理解してくれることでしょう。

下の図は、建築家が描いた室内のスケッチです。このようなスケッチをすばやく描いて、あなたのイメージを具体化する手助けをしてくれます。

費用が発生するのはどの時点から?

一般に、費用(「設計料」といいます)が発生するのは建築家が設計作業を始めた時から、と言うことができます。設計作業は、初期の段階では間取り作りが中心になります。したがって、間取りを作ってもらうためには費用がかかると考えておけば間違いはないでしょう。

住宅メーカーや工務店は、設計だけでなく施工(建設工事のこと)も手がけるので、総費用に設計料も含んでいます。したがって「間取り作りまでは無料で」というサービスを行っていることも珍しくありません。

しかし建築家は施工はせず、あくまでも設計のみを請け負います。したがって、間取り作りも設計料の一部となります。ユーザーにとってみると「間取り作りくらいは無料で」と願いたいところですが、この部分こそがまさに建築家の設計専門家たる核心と考えるべきでしょう。

ただ、建築家に事前に相談することで、間取り作りの作業までで設計料がいくらかかるかを知ることは容易にできます。また、その間取りで実際に建てた場合に総設計料と工事費がいくらかかるかを、概算見積もりしてもらうこともできます。

したがって、複数の建築家に間取りを作ってもらって内容とコストを検討するような、いわゆる「相見積もり」をすることも十分に可能です。

初対面からの流れ

では、建築家との出会いから発注までの流れを整理してみましょう。

まず雑誌やウエブサイトなどのメディアで、関心のある建築家を探します。そして電話やEメールで問合せをして設計事務所を訪問し、こちらの要望や予算を伝えます。

すると建築家は、自分ならどのような家を設計してあなたの役に立てるかを、丁寧に話してくれます。同じ建築家という職種でも、百人百通りの価値観を持っていますから、異なった建築家では、設計の力点も変わってきます。それだけに建築家のしてくれる話は、目からウロコが落ちるような興味深い、とても参考になる話が多いですよ!

こうして話をじっくりと聴いてみて、ぜひこの人の考えた我が家のプランを見てみたいと思ったら、ぜひその先の相談をしてみましょう。間取り(建築家は「マスタープラン」と呼びます)を考えてもらう場合、費用はどれくらい用意すれば良いのか、期間はどれくらい見ておけば良いか、といったことを尋ねてみましょう。

そしてマスタープランを発注し、建築家が設計した案をプレゼンテーションしてもらいます。図面や模型を用意して、建築家は丁寧に説明してくれます。

もしその案が目に留まったなら、さらに詳細な要望をいろいろと話して、マスタープランの改良案を考えてもらいましょう。建築家は、クライアントが「OK」と言うまで何度でもプレゼンテーションを繰り返して、マスタープランを改良してくれます。もちろん、建設コストのことも常に配慮してくれますよ。

こうして、いよいよ納得の行くマスタープランが完成したら、改めて建築家と設計依頼の契約を結びます。

しかし、もし建築家の提示したマスタープランがあなたの意に沿わないものであったら。その時は、遠慮なく断って良いのです。マスタープラン作成の費用は発生しますが、その時点で建築家への依頼は終了となります。

断るのは何となく気詰まりに感じられるかもしれませんが、心配は要りません。建築家選びとは、建築家の良し悪しよりも、むしろ考え方の相性によって決まることの方がはるかに多いのです。良い建築家であればあるほど、相性の異なった依頼主から断られる経験は豊富に持っていますので(つまり大勢から相談を受けていますので)、気に掛ける必要はありません。

下の図は、室内の様子をコンピューターで立体図化したものです。建築家はこのようなツールもふんだんに使ってプレゼンテーションをしてくれます。
横山幸弘「MMT邸」

建築家のどこに注目すればいい?

さてそれでは、数多い中からどうやってあなたと相性の良い建築家を探し出せばよいでしょうか。いくつか挙げてみましょう。

まずいちばん大切なのは、建築家があなたの話をじっくりと聴いてくれること。何十年も住み続ける大切な住まいを作るのですから、要望や懸念など、建築家に伝えたいことはたくさんあるはずです。それらに熱心に耳を傾けてくれる建築家を探しましょう。

次は、わかりやすい話をする人。建築家は熟練した専門家ですから、ついつい専門用語や難解な用語を使って話しがちです。けれども、真に建て主思いで誠実な建築家であれば、アマチュアにも伝わる平易な言葉で、わかりやすく語ってくれるはずです。

次は、あまり「ノー」ばかりを言わない人。例え何百件もの設計を手がけていても、1件1件の住み手がすべて異なる住宅設計は、建築家にとってはすべてが新しいチャレンジの連続です。あなたと家族のためのたった1件の住まいのために、極力「ノー」を言わずに可能性の限界まで考えてくれる人。そんな建築家を探したいものです。

次は、これは私の私見もあるのですが、模型をたくさん作ってプレゼンしてくれる建築家。熱心な建築家になると、模型を大小たくさん作って設計の検討をします。二次元の間取り図だけではなかなかわかりにくいからです。あなたが建築家の事務所を訪ねたときに、もし事務所内が模型の山になっていたら、相当熱心に1件1件を検討してくれる建築家だと想像ができますよね。

下の写真は、ある住宅プロジェクトのために建築家の事務所が作った模型です。

こういう建築家は要注意かも

一方、建築家には個性的な人がとても多いだけに、時にはなかなか難しい人もいます。そんな人に設計を依頼してしまうと、それこそ要望を伝えるにも遠慮がちになってしまいますよね。そこで、建築家選びの注意点をいくつか。

まず、話をあまり聴かずに自分の話ばかりをする人。なんだか設計に先立って、すでに頑固な見方が存在してしまっているようで、これはやはり、建て主としてはちょっと寂しいですね。

次は、つい説教口調になる人。相手は経験豊富な建築家、こちらは新築経験に乏しいアマチュアです。気持ちはわからなくはないのですが、やはりここは、上から来るのではなくて目線を揃えて語り、聴いてほしいものですよね。
今日ではとても大勢の建築家が住まいの設計を手がけています。その中から、あなたの新居にもっとも相性の良い人を探し出すのは、一見大変な作業に思えるかもしれません。しかし同時に、建築家探しはとても楽しい、わくわくするような作業でもあります。建築家の出ている雑誌やウエブサイトを、カタログブックのようにたくさん覗いてみましょう。そしてご家族みんなで、この人が良い、あの人が良いと語り合ってみましょう。そんな時間がやがてはすてきな住まいへと結実してくれるはずです。
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