建築家のお話第3回目の今回は、いちばん気になる費用についてお話ししましょう。せっかく家を建てるのだから、建築家に依頼してじっくりていねいに設計してほしい。でも設計料ってなんだか高そう。それにうちの新居はお金持ちの邸宅でなく低予算の家だし、断られてしまうかも知れない。そんなふうに考えてしまいがちですよね。でも実は、決してそんなことはないのです。その理由についてご説明しましょう。
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建築家の設計料は高い買い物ではない
建築家は設計料も含めた予算計画をしてくれる
会って話すのは基本無料
設計料は具体的にいくら?
低予算や狭小敷地ならばこそ建築家に設計を依頼しよう
建築家の設計料は高い買い物ではない
設計料は住宅の規模によりますが、具体的には百万円を超える額のものです。しかし結論から言いますと、この出費は決して高いものではありません。本当に自分たちに合った良い家に住みたいと考えるなら、むしろ安い買い物と言っても良いと思います。
低予算の家や小面積の家では工事費が少なくなりますので、設計料も少なめになります。しかし設計料が少ないからと言って手を抜くようなことはありません。建築家は大邸宅と何ら変わりなく、ていねいに設計してくれます。
写真は『東中山の笑う家』というローコスト住宅の外観です。「1000万でつくろうの合言葉ではじまった、笑う家プロジェクト!超ローコスト住宅。でも素材も設備も手抜きはありません」。
建築家は設計料も含めた予算計画をしてくれる
工務店や住宅メーカーには設計無料と謳っている会社が多いですが、実際は工事費の中に設計作業の代金が含んであると考えるのが自然でしょう。設計部署の人が時間を割いて作業をするわけですから、賃金は必ず発生します。
設計施工を一貫して手がけるので、工事費用という形でまとめて請求しないと割高に見えてしまいます。そこで設計無料としているのでしょう。
これに対して設計事務所は工事はせず、あくまでも設計だけを手がけます。したがって費用は「設計料」というとてもわかりやすい形で請求されます。一見、工事費用と別に設計料が発生して割高に感じられますが、建築家は一貫して「予算=設計料+工事費用」と考えてコスト計画をしてくれますので、設計依頼をしたせいで予算オーバーになってしまったという事態は起こりません。
そう考えると今度は、予算から設計料が引かれてその分工事費用が少なくなり、安普請の家になってしまうのではないかと心配になります。が、まさにここが建築家に頼むメリットの核心なのです。費用が少ないからただちに安普請になってしまう、という設計は建築家はしません。特に構造などの肝心な部分にはしっかりと予算を回し、将来的にアップグレードが可能な部分(例えばビニルクロスなどの仕上げ材や機器類など)で金額を調整していきます。
前回の「メリット・デメリット」でもお話ししたとおり、建築家は常に金銭面と技術面を明らかにして施主にわかりやすい状態にしておくので、安心して任せることができるのです。
下の写真は「富沢の家」という住宅のリビングダイニング・キッチンです。予算2000万円の住宅ですが、ローコストを感じさせない創意工夫に充ち満ちた家ですね。
会って話すのは基本無料
建築家に会って相談すると、それだけでも費用がかかるとよく言われます。しかし実際にはよほど著名で仕事を山と抱えた建築家でもない限り、相談料を取ることはまずありません。建築家にとっても自分に興味を持って相談に来てもらえるのは大変うれしいことですので、ほとんどの場合は喜んで時間を作ってくれます。
同様に、間取りを考えてもらうだけでも有料と言われています。まあこちらの方は、間取りが設計の重要な一部であるだけに、まったくの無料というわけには行きません。
しかし現実には間取りがない状態では、契約もなかなか成り立ち難いものです。そこで、契約に至る前に間取りのプレゼンを前倒しでしてくれる建築家が多いのが実際です。また無料とまでは行かなくても、「基本計画料」等の形で安価に間取りを考えてくれる建築家も多数います。
設計料は具体的にいくら?
ところで設計料というのは具体的にいくらくらいのものなのでしょうか。
設計料の決め方は建築家によってまちまちに異なるわけではなく、建築士法で定められた設計料のガイドライン(四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約)が存在しています。ほとんどの建築家はこのガイドラインに沿って契約書を作って業務を行っています。
しかし住宅のような小規模な建築では、このガイドラインどおりに設計料を請求しますとかなりの金額になってしまうことがあります。そこで、実際には総工事費に対して何パーセント、という形で設計料を請求する場合が多いと言えます。だいたい総工事費に対して10〜15パーセント程度の設計料が多く、知名度の高い建築家になると20〜25パーセントを請求する人もいます。
ここで簡単な例を挙げて試算してみましょう。仮に総予算が2000万円、設計料は12パーセントだとします。そうしますと、
総予算 = 総工事費 + 設計料 = 総工事費 + 総工事費の12% = 2000万円
つまり総工事費は約1785万円、設計料は約215万円となります。総予算のうち200万円ちょっとが設計料に充てられることになります。
写真は「四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約書類」(小規模向け)です。
※ 四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約約款調査研究会 ホームページよりダウンロード
低予算や狭小敷地ならばこそ建築家に設計を依頼しよう
低予算や狭小敷地の場合、建築家は設計を引き受けてくれるのでしょうか。もちろん引き受けてくれます!
むしろ低予算や狭小敷地だからこそ建築家に依頼する、と考えても良いのです。実際、悪条件すぎて工務店にも住宅メーカーにも断られてしまったので建築家に依頼する、という施主は少なくありません。
低予算や狭小敷地などの苦しい条件下にあると、逆にそれをモチベーションにして猛烈にがんばる建築家は大勢います。住宅に限らず設計というものは、楽々できてしまうことがほとんどありません。普通に可能なことをはるかに上回る膨大な要望と膨大な困難が常に同居しているものなのです。
そのような世界で生きてきた人たちですので、悪条件下で施主の要望を満たす工夫を考えるのが好きでたまらないという建築家も多いのです。低予算や狭小敷地ならば、むしろ進んで建築家に相談をしてみましょう。
写真は「二門開口の家」という狭小敷地住宅の外観です。間口わずか4.2メートルの敷地に立つ住宅です。一見シンプルですが、洗練された外観やトップライトに熟考のあとを見ることができます。
工事費がいたずらに増えてしまわないように、つまり自分の設計料が増えてしまわないように、寝る間を惜しんでがんばって働く奇特な人、それが建築家である。ある本でそんなことを読んだことがありますが、まったくそのとおりだと思います。
数字だけで見れば設計料は安い出費ではありません。しかし、それによって得られる満足度は一生のものと言えます。建築家は決してお金持ち相手だけの仕事ではありません。予算が少ない、敷地が狭いなどの場合こそ、むしろ建築家にどんどん依頼して良いのです。
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