2018年04月15日更新

インテリア(DIY)

親から子へ——DIYはイギリス家庭の伝統芸だ

イギリス人は、総じてDIYが得意である。家の中の何かが壊れても業者に電話したりしない。基本的には自分で直す。壁のペンキ塗りや、棚の取り付けといった簡単なものだけではない。屋根も、シャワーも、コンセントも、ありとあらゆるものの修理方法を心得ているのだ。一部の人をのぞいて。


魔法使いのようなイギリス人

とあるイギリス人家庭で見つけた本、『DIYにまつわる1001のヒントとコツ』。今回の登場人物の持ち物ではない

とあるイギリス人家庭で見つけた本、『DIYにまつわる1001のヒントとコツ』。今回の登場人物の持ち物ではない

先日、生粋のイギリス人である友人のAくん宅に泊まった時のことである。その日は休日だというのに一日中雨で、僕と彼はやることもなくリビングでのんびりとNetflixのくだらないコメディをみていた。子供達はレゴに興じ、Aくんの奥さんは買い物中。静かな午後。濃いミルクティーを飲みながらいかにもイギリス然としたひと時を過ごしていたのだが、プログラムの切れ目で、Aくんがおもむろに口を開いた。

「ちょっと壁に棚を取り付けるのを手伝ってくれないか?」

奥さんだと背が届かず、DIYを保留していたことをふと思い出したらしい。僕はビール二杯をエサにまんまと釣られるコトになった(一杯ではないところがイギリスらしい!)。

さて、このAくん、何を隠そうめちゃくちゃ不器用なのである。これは昔から変わることのない彼の特徴。物置から大きな工具箱を取り出すのだが、手つきだってどうにも慣れない。そのうちに「いやぁ、俺、こういうの教えてもらってこなかったからね」と言い訳ばかりするのがおかしくておかしくて。何もそんなに自分を卑下しなくたっていいのに。

実は、DIYはイギリスに生活する上で欠かせないスキルの一つである。老若男女を問わず多くの人がDIYの基礎を知っている。僕は初めてこの国に来た時、あれもこれも自分たちで作ったり修理したりする彼らの習慣に随分と驚いた。棚の取り付けや壁紙の張り替えだけではなく、配線までやってしまうのだからまったく恐れ入る。

話をAくんに戻そう。笑いをこらえるのに必死な僕に勘づいた彼は、たまらずこう続けた。「弟の方が器用だったからね。うちの親父も弟にばかり熱心でさ」。そう、イギリス人にとってDIYは親から子供に継承される一種の伝統なのだ(これはAくん一家だけの話ではない。複数の英国人家庭で同じことを聞いたからこう言って差し支えないと思う)。残念ながらAくんは早々に落ちこぼれたようだけれど、40歳を手前にしてもまだ「やる気」はあるらしい。だから、何かあった時のためにとDIY用の工具をしっかり家に置いているのだ。

——壁に穴を開け、ネジを回す。棚と壁のコンビに立ち向かうこと30分。Aくんをリーダーとするわれわれタッグは完全に敗北した。ネジが棚板の重さに耐えられなかったのだ。壁に虚しく残る大きな4つの穴。Aくんは泣きそうな目になりながら、それでも笑顔を作った。

「DIYが苦手なイギリス人もいるさ」

言い訳だけは一級だ。

冒頭の本の中身。イギリス人のDIYへの情熱たるや

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シャワーも自分で取り付けます。本気度が違う

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この記事を書いた人

YUICHI ISHINOさん

ロンドンに暮らす編集者/Webプロデューサー。各媒体を通して現地の旬の情報を発信しています。

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