2017/11/04更新0like3697view

著者:YUICHI ISHINO

「書院造を携帯ショップにリノベ!」と同じくらいの衝撃かもしれないロンドンの歴史ある建物

この記事を書いた人

YUICHI ISHINOさん

ロンドンに暮らす編集者/Webプロデューサー。各媒体を通して現地の旬の情報を発信しています。

ロンドンの街中を歩いているといろんな表情の建物に出くわす。古い建物もけっこう残っていて、新しいビルの中にそれとなく調和している様子なんかは散歩者をほっこりとした気分にさせる。イギリスらしいというか、歴史が感じられる建築物もしっかりと利用されているから面白い。今回は、430前からロンドンの中心部に鎮座する、とある建物を紹介する。

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▽ 目次 (クリックでスクロールします)

ロンドン、土曜日の書店の幸せ

毎週土曜日はほんの少し早起きをして9時前に家を出る。行く先はロンドン中心部の大型書店FOYLES(フォイルズ)だ。店に着くとまずは1階の「デザイン」コーナーを物色し、それからしばらくしてレジ近く陳列された売れ筋を確認する。今週は、カズオ・イシグロがノーベル文学賞をとった後だったので、「フィクション」部門の一位には彼の作品「Never let me go」(わたしを離さないで)が堂々と飾られていた。

このフロアでは気に入ったものが一冊か二冊見つかることが多いので、最終的に財布の紐をゆるめることになる。そのあと併設された5階のカフェへと向かい、いつものようにアメリカンとアーモンドクロワッサンを注文する。隅っこの席に座って買ったばかりの本を取り出しのんびりと眺めるまでがルーティンで、まあこれは僕にとって一週間をねぎらう儀式のようなものだ。それからようやくパソコンを取り出し作業に取り掛かるわけなのだけれど、作業とはつまり、この原稿を書くということに他ならない。
開店前のFOYLES

開店前のFOYLES

様々な表情を見せるロンドンの街並

少し話はそれるけれど、最近散歩がめっぽう楽しい。日本にいるときはまったく興味がなかったのに、ロンドンに来てからウェアラブルの万歩計を買うほどハマっている。理由は単純。街の表情が豊かなのだ。だから歩いていて飽きることがない。もちろん以前住んでいた東京にだって素敵な景色はたくさんあったけれど、異邦人の僕にとってロンドンの街並みはすべて新鮮で、だからこそ一つ一つの建築にまで目が行くようになり、それを表情として捉えるようになったのだと思う。おかげで3キロくらいやせた。
閑話休題。今週見つけた本が写真(下)の「London The Architecture Guide」だ。その名の通りロンドンの有名建築を紹介したガイドブックで、建築様式ごとに詳しく説明が加えられているのがわかりやすかった。ロンドンにはヴィクトリアン様式、ジョージアン様式、エドワーディアン様式など様々な建物が立ち並び、それこそがこの街の魅力なのだけれど、僕のような素人にはいまいちスタイルの判別がつかない。だからこういった網羅的な本は本当にありがたいのだ。そういうわけでさっそく購入。いつものカフェでクロワッサンを頬張りながらパラパラとめくっている途中、白シャツにアメリカンのしずくを一滴落としてしまったけれど、この本を手にいれた満足感でそんなことはどうでもよくなった。
今の僕にぴったりの本だった

今の僕にぴったりの本だった

歴史的建造物を上手に利用する

さてさて、まさかフェイスブックでもあるまいし、本を買ったということだけで話を終わらせるつもりはない。前置きが長くなってしまったけれど、今回は「London The Architecture Guide」を眺めていて、ふと目に止まったある建物を一つ紹介したいと思う。その建物の名前はThe Staple Inn。白い漆喰の壁と黒い梁が印象的な、テューダー朝の建築だ。1586年に建てられたもので、一級の歴史的建造物(Listed buiding)として国の機関から指定も受けている。その頃の日本といえば安土桃山時代だから、さしずめ書院造のようなものだろうか(いい加減な比較です)。


実はこの建物、ロンドンのど真ん中(シティ)にあって、僕も前を通ることがしばしば。恥ずかしながら本を読むまでは重要建築物とはつゆ知らず、「ぼろっちいなぁ、歪んでいるなぁ」程度にしか意識していなかった。
地下鉄チャンスリーレーン駅前にある

地下鉄チャンスリーレーン駅前にある

これは遠巻きに捉えた建物の写真(上)だが、改めてちゃんと見ると威圧感がある(ように感じられる)。しかし、同時に、街に違和感なく溶け込んでいる様子も見てとれるだろう。この周りとの調和は一体どこから来るのか。ここで特筆しておくべきが建物の利用法についてだ。先の写真をもう一度よく見ていただきたい。1階にテナントとして入っている店が何かわかるだろうか。そう、Vodafoneだ。430年前の建物に携帯ショップですよ、お客さん。歴史的建造物がこんな風にリノベーションされているなんて。本を片手に改めて現場に行って、これにはちょっと驚かされた(それまで全く気づかなかったくせに)。
建物が歪んでいるように見えるが、カメラレンズのせいではない。本当に歪んでいるのだ

建物が歪んでいるように見えるが、カメラレンズのせいではない。本当に歪んでいるのだ

しかし、このコラムでも何度か書いているけれど、古いものは工夫して有効活用するのがイギリス流。それもベストな形でこれを実現する。今回でいうと、僕が一番感心したのは色味の調和だ。ご存知の通りVodafoneのイメージカラーは赤だけれど、建物の色に合わせ、ここではこげ茶色で統一。当たり前のことかもしれないけれど、建物全体の雰囲気を壊さない工夫に余念がないのだ。まさに、これこそがイギリスなんだな。

そう言ったわけで、しばらくはこの「London The Architecture Guide」を片手に散歩を楽しむつもりだ。このThe Staple Innのような建物があちこちに見つかるだろう。今回はルネサンス以前の建築だったが、おなじみのヴィクトリアン様式、ジョージアン様式、エドワーディアン様式など、学んだ成果も少しずつ披露できればと思う。
なんというか、3世代が並んだ感じ

なんというか、3世代が並んだ感じ

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