築260年というとてつもなく古い親戚の家が現在プチ改装中。折よく昔ながらの薪ストーブを譲り受けるという幸運に恵まれ、この秋からそれが大活躍しています。あまりに心地いいので、ロンドンから1時間の小さな町にあるその家に立ち寄る回数も増えた…。英国式cozy lifeの第5回。今回はまさにコージーな空間に欠かせない暖炉の様子を取り上げます。
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イギリスの住宅寿命は長い!?
息を吹き返した煙突
心地よすぎてそばから離れたくない……コージーな暖炉
イギリスの住宅寿命は長い!?
イギリスの住宅の寿命は日本のそれにくらべて長いと言われています。平成8年に国土交通省が発表したところによると、イギリスが75年で日本が26年。やや古いデータではありますが、飛躍的な増減はおそらくないと思われるので、感覚として比較する分には有効でしょう。
いずれにしても、主に石造りのイギリスの住宅は長持ちするというのは定説。とりわけ田舎に行けば、200歳、300歳の家もざらにあります。事実、ぼくの親戚の家もそのうちのひとつで、一部増築した部分を除き、昔からの敷地部分は築260年だと、親戚のおじさんが自慢げに話していました。
260年前といえば日本では江戸後期にはいったばかり、そんな古い家に住むのもそれはそれで大変なことで、けっこう定期的なメンテナンスが必要です。このおじさんがけっこう器用なひとなのですが、家に不具合が起きるとひとりでなんでも片づけてしまいます。最近はほぼリタイアとなって時間ができたせいか、模様替えやら配線やらにまで精を出し始めました。一度始めると、とことんまでやるのが彼の性分。この家はぼくの住むロンドンから電車で約1時間の場所にあり、たまに立ち寄るのですが、行くたびに彼から「ここをこうリフォームするんだ」という計画を聞かされ、そのたびに自分には無理だなぁと横目で紅茶をすするぼく。「なんでも自分でやっちゃえ!」の精神はほんとうにイギリス人らしいなぁと感心します。
息を吹き返した煙突
さて、そうしたわけで親戚の家がプチ改装中なのですが、少し前に、折よく昔ながらの伝統的な暖炉を譲ってもらえる話が持ち上がりまして、親戚中にこのニュースが駆け巡りました。イギリスはクリスマスになるとどの家庭もだいたい実家に集まり、正月気分で過ごすのがならわしですが、わが家も例にもれません。映画のように「すてきな暖炉のあるクリスマス」をイメージして皆が色めき立ったというわけです。
これまでも暖炉があったといえばあったのですが、ほとんどフェイクといえる代物……。一方の新しい暖炉は本格的なもので、今回の設置にあたり長らく眠っていた煙突も復活。260歳と年を取ってしまった家に若々しい活気が戻ってきました。
心地よすぎてそばから離れたくない……コージーな暖炉
ぼくは人生でまだ暖炉にあたったことがなく、「最初の火入れには絶対に呼んで!」と強くお願いしていました。そして、ついに念願がかなったのが10月中旬(意外かもしれないですが、イギリスは場所によってはもうそのころから寒いんです)。カメラを片手におじさんと一緒に薪を重ね、最後、丸めた新聞紙にそっと火をつけます。
手こずることなく、火は順調に広がっていきます。ちなみに、親戚はかなり田舎に住んでいるので、薪は近所からもらって来たり、庭の枯れ枝で代用したり。よほど足りなくなればホームセンターで買い足すと言っていましたが、毎日火をくべても月に1万円ぐらいの費用感のようです。
火がついて10分もすれば目の前が暖かくなりはじめ、さらに10分すると15畳ほどの部屋全体にその暖かい空気が巡ります。
アクセサリーは写真のようなものが揃っており、ポーカー(火掻き棒)、火バサミ、シャベルに灰掻きなど。鉄なのでどれもかなり重いです。
暖炉ひとつで贅沢な空間に様変わり――。ぼんやりと火を見ているだけでも気持ちが落ち着いてきますね。
ぼくもクリスマス休暇は、ここで過ごす予定。今から、暖炉の前にロッキングチェアを置いて本を読むのが楽しみです。