2017/04/18更新0like20048view

著者:水沼 均

梁(はり)って何だろう?頭上世界の主役に君臨する、すてきな梁の見せ方大全

この記事を書いた人

水沼 均さん

建築設計の学校で長年教師を務め、大勢の生徒さんと接してまいりました。年齢、経歴、そして住まいへの思いも大変多様で、他では得られない貴重な経験ができました。その経験を生かして、豊かな住まいづくりに役立つような記事をたくさん書いていきたいと思います。

梁は建築を支える重要な骨組みの1つです。骨組みは普通、床や壁、天井の中に隠れていて、目に触れることはあまりありません。梁も同様です。しかし時として梁を意図的にむき出しで作ると、独特の味わいを持った雰囲気のインテリアを作り出すことができます。

▽ 目次 (クリックでスクロールします)

梁とはなに?

梁とは、床や屋根を支えるために柱と柱の間に架け渡された横方向の骨組みのことです。通常は天井裏に隠して作られ、住まいが完成したあとは目に触れることはありません。

が、大小の梁が建物を支えるために組まれている様子は、眺めていてなかなか味わいのあるものです。そこで設計者は時として梁を露出させて、梁組みを眺めて楽しめるように住まいを作ります。

では梁をむき出しにして見せるとどのような魅力が生まれるのでしょうか。さっそく例を見ながら梁の魅力をご紹介しましょう。

梁を露出して見せて頭上に独自の世界を創り出す

下の写真は洋室のダイニングですが、日本的なフローリングや家具、そして障子のコーディネーションによって、繊細な和風の佇まいを演出しています。

しかし頭上を見ると天井板は張られておらず、梁がむき出しで架け渡されています。和風のテイストの中に古民家風の趣きが絶妙にミックスされて、独自の美しい世界を作り出しています。
後藤孝「長久手の庭」
また下の写真では、上階の床梁をむき出しで見せています。天井板を張っていないので頭上が高く、どこか懐かしい山小屋のような雰囲気を作り出しています。

強い存在感で住まいのシンボルとなる梁

太い梁をむき出しで頭上に架け渡すと、力強いシンボルのような存在が住まいに誕生します。
人の目線はふだん、ほぼ水平な状態がもっとも多いのですが、こうして強い存在感のあるものを頭上に設けると、水平だけでなく上方にも、眺めて楽しい世界が誕生します。

下の写真は梁を角材でなく太い丸太で組んだ例です。大変な太さと重量感を感じますね。まさに、住まいのシンボルとして君臨する梁です。
藤井兼祐「浦和岸町の家」
下の写真では、シックなリビングの頭上に荒削りな松丸太の梁が架け渡されています。リビングの繊細さと豪胆な梁が、実に良い感じで対照をなしています。梁をむき出しにすることで、このような楽しいコントラストを住まいに創り出すことができるのです。

一家の大黒柱が垂直の存在だとするならば、頭上にドッシリと架け渡された太い梁は、「大黒梁」とでも呼びたくなる存在ですね。

住まいを上界と下界とに分ける梁

高い天井の下に梁をむき出しで設けると、独特な世界が頭上に出現します。下の写真は屋根の骨組みをむき出しで見せたリビングダイニングですが、梁もまたむき出しで水平に架け渡されています。この梁は床から2メートル以上高い位置にありますが、天井がとても高いだけに、もっと低い位置にあるようにも感じられます。

写真を見ていると、この1本の梁の下は人の背の高さに近いヒューマンな生活圏、そして梁の上ははるか高い天上界というように、梁によって世界が縦に二分されているように感じませんか?

このように梁は、天井のデザインと組み合わせることで、住まいの世界を上界と下界に二分して見せてくれます。これもまた梁の持つ楽しさの1つですね。
松木貴史「「つし」のある家」
下の写真も同様に、梁から上の高い上界とヒューマンな下界の存在を強く感じさせてくれます。高い天井がさらに一層高く感じられますよね。
大沢宏「平屋 純和風スタイル 幸せエコ住宅」

間取りを可視化する梁

住まいの間取りというものは、図に描くことはできますが、目で全貌を一度に見ることはほとんどできません。しかし時として、頭上の梁が間取りの姿を示して見せてくれることがあります。

下の写真では頭上を交差する梁が、リビング、ダイニングキッチン、収納スペース、そして階段室の存在を柔らかく分けて見せています。もし梁がなければこれらの場所はすべて一体のワンルームに見えることでしょう。しかし梁が頭上を輪郭づけることで、この住まいが非常に緻密で合理的に間取られていることを知覚できるのです。

梁の複雑な架構を楽しんでしまおう

屋根を支える梁を「小屋梁」といいますが、小屋梁は時に複雑な入り組んだ形で架構されて屋根を支えることがあります。

梁をむき出しで見せるとき、設計者はできるだけ並びを整えて見せることが多いのですが、あえて複雑な姿のままむき出しにして、豊かな表情を楽しめるようにした例もあります。

下の写真では真っ白な部屋の頭上に、木肌もそのままの複雑な架構の梁を見せています。形が複雑なだけに、シンプルなインテリアとの対比がいっそう際立っていますね。
また下の写真は古民家のリノベーションです。約100年間にわたってこの家の屋根を支えてきた太くて複雑な梁組みを、すべて露出して見せています。圧倒的な迫力ですね!

マンションリノベーションで既存の梁を工夫する

このように戸建て住宅では大変魅力ある存在の梁ですが、マンションのリノベーションでは一転して、既存梁は時にやっかいな存在になることもあります。実際のリノベーションでは、どうやって既存の梁との調和を図ればよいでしょうか。

下の写真は鉄筋コンクリート造のマンションリノベーションですが、梁の部分には仕上げをせずに、あえてコンクリートの地肌をそのまま残して見せています。結果、梁は真っ白な壁と独自の対比をなして、美しく引き立っています。
一方、下の例は既存梁を極力天井裏に隠した例です。そして、梁の高さを利用して天井に段差を設けて変化を出し、段差には照明を埋め込むという凝った演出をしています。既存梁の存在があってこそ生まれ出た、すてきなデザインですね!
梁は屋根や上階を支えるために不可欠な骨組みですが、新築の際もリフォーム・リノベーションの際も、その存在感を積極的に活用することで、住まいに新しい魅力を次々に取り入れることができます。ぜひ、住まいの頭上の魅力について検討なさってみてください。

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